2人が本棚に入れています
本棚に追加
月が見下ろす、街を見下ろせる丘に、
女と男と首が居ました。
「何がそんなに楽しいの?」
いつまでもニヤニヤ笑う男に、
女は聞きました。
返事は返ってきません。
何故なら男は、首を紐で括って、木にブラリ吊られているのですから。
返事は返せません。
「ねぇ、何が楽しいの?
なんで笑ってるの?」
さらに問うても返事はありません。
「…なんでだろうねえ?」
女は問う対象を変えて呟きました。
いつまでも返事を返さぬ男から、自分が持っている首に。
しかし首も返事を返しません。
何故なら首は、首から下が無く、冷たくなっているのですから。
返事は返せません。
沈黙が流れ、聞こえるのは、女の赤く染まったドレスからポタリ滴る血の音だけです。
「静寂ほど虚しく寂しいモノはないわ。
ああ、私も静寂の一部に同化してしまえば、寂しくないのかしら?」
風が吹きました。
風に揺すられ、男と木を繋ぐ紐がギシリ音をたてました。
女はそれを同意ととり、
そして、
最初のコメントを投稿しよう!