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本棚に追加イジンサン、アルデンテ
ぐつぐつと沸いている鍋を持ち上げて、イジンサンは流し台の上の網ザルに中身をぶちまけた。シンクが「ぼこっ」と変な音を立てる。もくもくと立ち上る湯気の向こうで、イジンサンがニカっと笑う顔が見えた。
「今日もアルデンテだ」
その青い瞳が見つめる先、網ザルの上では、お母さんの腕みたいな細くて白い肌のパスタが盛り盛りと山を作っている。
一日三回、それを三日。
同じ言葉と笑顔、そして同じような山盛りのパスタを見た。
この後いつものように、イジンサンは空になった鍋を火にかけ、缶に入った真っ赤なソースを流し込む。両手首をロープで結ばれている私の仕事は、木ベラでそれを掻き混ぜることだった。
「焦がしちゃだめだよ」
イジンサンが私の頭を撫でた。煮立ち始めたミートソースに少し焦ってちょっと乱暴に掻き混ぜると、どろっとしていた筈の真っ赤が、ぴしゃっと瑞々しくはねた。
あっ
和音になった二人の声が、暗い台所にじめっと反響する。赤い飛沫は、数日前まではきっと真っ白だった筈のイジンサンのカッターシャツにドット柄を描いた。
「ごめんなさい」
私の呟きは、湯気と共に換気扇へガタガタと吸い込まれていく。イジンサンは無言でパスタにオリーブオイルを少量まぶし、私の手元の煮立った鍋に入れた。
「ほら、麺に絡むように。今度は丁寧に」
私は少し泣きそうになりながら、白肌のパスタを赤く染め上げていく。ごめんなさい。不意に漏れ出た再びの呟きに、イジンサンは私の背中をさすりながら、いいんだよ、と優しく応えた。

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