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まひろくん
俺、西条亮には好きな人がいる。
大学の同じゼミに所属する木村真尋くんだ。
大人しくて可愛い真尋くんに、俺は密かに恋心を抱きながら過ごしていた。
自分で言うのもなんだけど、俺は結構モテる。身長も高く、顔もそれなりに整っているし、勉強も運動もできる方だし、周りの皆との人間関係も上手くやっていけるタイプだ。
一方真尋くんは、特別目立つこともない平凡なタイプだ。だけど小さくて大人しい真尋くんの小動物みたいな可愛らしいところとか、守ってあげたくなるようなところとか、食べちゃいたくなるようなところとか…そんな魅力いっぱいの真尋くんに一目惚れしてしまった俺はとにかく真尋くんが大好きで大好きで仕方がないのだ。
だけど大学に入って2ヶ月、真尋くんと俺はまだあまり話もできていなかった。俺は早く真尋くんと仲良くなりたいのだけど、真尋くんは人間関係にも奥手なのか、ゼミの皆ともまだ打ち解けていない様子で、俺みたいな目立つタイプとは特に距離を置いてる感じがある。
そこで俺は、交流を兼ねてゼミの皆でハイキングに行くことを提案した。
居酒屋での飲み会とかよりも、自然の中で弁当を食べたりする方が真尋くんは好きそうな気がしたからだ。
ハイキング当日、俺は初めて見る真尋くんのジャージ姿に身悶えた。
それでも平静を装って、真尋くんに声をかける。
「おはよう。晴れてよかったね」
「西条くん、おはよう。そうだね」
やっぱり真尋くんはぎこちなさそうに話す。
「亮でいいよ。俺も真尋くんって呼んでいいかな?」
「う、うん」
今日は絶対に真尋くんと仲良くなるんだ。その為にも、俺は真尋くんとずっと行動を共にした。
「はぁ、はぁ、」
歩き始めて30分、それほど急な山道ではないが真尋くんの息が上がってきた。
「大丈夫? ちょっと休憩しようか」
「だ、大丈夫だよ。気にしないで」
「でも…」
その時、俺は真尋くんの足の運びがぎこちないことに気が付いた。
「もしかして、靴擦れしてる?」
「えっ」
「ちょっと見せて。」
俺は屈んで真尋くんの足を取り、その足を俺の片膝に乗せた。
「ちょっ、恥ずかしいよ…」
真尋くんは恥ずかしそうに周りの様子を気にする。
顔を赤らめた真尋くん、可愛すぎる。
でも今はそんなことより真尋くんの足の方が大事だ。
見るとやっぱり靴擦れしていた。
「んっ」
傷口に触れると痛かったのか、真尋くんが可愛いらしい声を出した。絆創膏を貼り応急処置をする。それでも歩いていると痛むかもしれないけど、真尋くんはこれで大丈夫だと言った。
「ごめんね、西条くん」
申し訳なさそうに言う真尋くん。
「亮だよ」
俺は名前を呼んでほしくて訂正する。
「りょ、亮くん…」
恥ずかしそうにしながらも、ちゃんと名前を呼んでくれた真尋くん。
本当に可愛い! 好き!!
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