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目覚めの朝
ベッドの上で目を覚ました。
頭が痛い。そういえば昨日は飲み会だった。だいぶ飲んでしまった。
まだ重い体をベッドに沈めたまま寝返りをうつと、俺の目の前に真尋くんの顔があった。
「!!!」
え、どういうこと!? 何で真尋くんがここに!? しかも裸だし! 俺はまだ夢を見ているのか…?
焦る思考の中、昨日のことを思い出す。
昨日は俺だけ先に帰って…。いや、そういえば誰かが付き添ってくれたような気も…。いや、でもまさか。だって、そうだとしたら昨日の妄想は妄想じゃなくて、本当の真尋くんとやったってこと…?
しかしよく考えると、確かに昨日の真尋くんは俺が録音した記憶のない言葉を言っていた気もする。喘ぎ声だって、ちゃんと俺の耳に残っている。そして現に今目の前に、裸の真尋くんがいるのだ。
じっと見つめていると真尋くんの瞼が揺れた。
あ、と思った時には真尋くんが目を開け、俺を見ていた。
「ご、ごめんなさい!!」
俺は反射的に土下座をして謝っていた。
俺の妄想が過ぎて、実際に真尋くんを抱いてしまうとは!
「い、いや、気にしないで。亮くんも酔ってたし」
俺に気を使ってくれる優しい真尋くん。
だけど違うんだ。確かに酔ってたけど、酔いの勢いとかではなくて、妄想と現実の区別ができなかっただけなんだ。
「真尋くん、本当にごめん。俺、真尋くんが好きなんだ。ずっとずっと大好きなんだ。だから、酔ってやっちゃったとかじゃなくて、夢と現実の区別ができなかったというか、むしろ頭の中では何度も真尋くんを抱いてたし。じゃなくて、とにかく俺は、真尋くんのことが本気で好きなんだ」
俺は勢いのまま告白をした。
このまま無かったことにはしたくなかった。
真尋くんには嫌な思いをさせたかもしれないけど、それでも俺の本当の気持ちを伝えたかった。
真尋くんは驚いたように俺を見つめる。
「…僕は、亮くんみたいに顔がいいわけでもないし、頭がいいわけでもないし、陽キャでもないし。そんな僕でもいいの…?」
きっと怒られるだろうと思っていたが、真尋くんは予想外の返事をした。
「いいに決まってる! というより、真尋くんがいいんだ!」
俺は真っすぐ真尋くんを見つめる。
「亮くんは優しいし、何でもできて、僕にとっては憧れの存在で。だから、僕のこと好きって言ってくれて嬉しい」
そう言って真尋くんは笑った。
「真尋くん」
俺は嬉しさのあまり真尋くんを抱きしめた。
可愛い可愛い真尋くん。妄想でもなく、音声だけでもなく、紛れもない本物の真尋くんが、今俺の腕の中にいる。
こんなに幸せでいいのかと思うくらい、俺は今幸せを噛み締めていた。
その後、真尋くんとお付き合いを始めた俺だが、今では音声を録音するのではなく、真尋くんを動画撮影するのが趣味になっていた。こっそりではなく、堂々と。
だけど以前録音していた音声を消してはいなかった。あれはあれで俺の大切な宝物だ。でも絶対に真尋くんにバレてはいけない。それはさすがに引かれてしまいそうだ。だから真尋くんに会えない日の夜にだけ、こっそり聞いている。
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