ずれていく現実

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 いつの間にか、あたしはもう高二の夏休みの直前まで来ていた。  あたしは、この一年半何をしていたんだろう――そんな思いが頭をよぎった。  一人前に恋愛だってしていたし、勉強はほとんどしていないが、その分思いっきり遊んだ。  でも、そんな思いがよぎるのは、思いっきりはじけて遊ぶことができる最後の機会だからであるのかもしれなかった。 あたしが通っているのは進学校だ。  「勉強なんてしてない」と言いながらも、勉強を頑張り始める人が増える二学期になる。  でも、その考えからだけで、その思いが出てきたわけでは無いことは、私が一番分かっていた。  一番の理由は、友達だった。  いつも一緒にふざけていた仲間達。  みんな、彼氏が出来て、「羨ましい」という気持ちが止まらなかった。  でも、それも昨日までであり、今その気持ちは確実に「妬ましい」に発展していた。  いつも一緒にいる五人組の中で、彼氏がいないのは、あたしと魚住結子の二人だけだった。  だから、通訳になりたいと瞳を輝かせている結子を見た時、とくん、と心臓が音をたてた。  置いて行かれたような寂しさ、そういうのが最も適当な感情であったと思う。  だからね、と結子は続けた。 「今から一生懸命勉強する。絶対、絶対叶えてやるんだから」  あたしだけ、目標も持たずに、愛せる人もいないまま、この世界を海草のように漂っているのだった。  だから、言ってしまったのだと思う。 「あたし、彼氏出来たんだ」
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