ずれていく現実

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「いーなぁ、羨ましい」 そんな友達の一言で、あたし達は恋愛話に突入した。  この言葉を発したのは、菫という名前に似合わない、ギャル道まっしぐらに突っ走った子。彼女曰く、「ギャルこそ純粋」なんだとか。  そんな菫は、一年間付き合っている彼氏とただいま倦怠期だという。  はあ、と溜め息をついてから、にやりという表現が相応しい笑みであたしを見た。 「くう、羨ましいぜ!新婚さんがぁー」  ポテトをちびちびと食べながら言う様は、親父も真っ青な親父っぷりだ。  そんな様子に、あたりに笑い声が響いた。  笑い過ぎで腹を抱えながらも、こっちを見るのは、鈴木加奈。長い黒髪を持っていて、まさに大和撫子である。事実、日本舞踊やお茶、お花を習ってるそうな。 「莉子も一言言ってくれればよかったのに。びっくりしちゃった。でも、おめでと」  そんな言葉に、罪悪感よりも先に幸福感が溢れ出したのは、間違っているのだろう。  でも、あたしも前に進めた気がした。例え、偽りだとしても。  「それにしても、初恋の相手が、彼氏、かっ!羨まし過ぎるーっ。バスケ部の弘君。かっこいいもんねぇ」 美緒の一言もあって、一気に質問責めになった。 何て告白されたのとか、何日から付き合い始めたのかとか。  いつも、する側にしか回ったことがないあたしとしては、嬉しい。  でも、それ以上に困ったという気持ちがわきあがった。  何であんなこと言ってしまったのだろう――後悔しても無駄などということは分かっている。  でも、後悔せずにいられないのだ。  今更、止められやしないのに。
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