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彼女になりきるしかないと思った。
そうでもしないと、バレそうで怖かったから。
今日の授業は我ながらさっぱり集中できなかった。
何を聞いても、右から左へと抜けるだけである。
頭の中では、これからどうするかということが、ぐるぐる回っている。
しかし、それも結局答えが見つからないまま、放課後の今へと至る。
鞄に教科書類を詰めていると、結子が話しかけて来た。
「なんか、莉子まで彼氏出来たって思うと、あたしも羨ましく思えて来たなぁ」
その言葉と一緒に、前の席に座った。
そして、いつの間にか、他のみんなも集まって来た。
結子の言葉を聞いて、心の中で跳ね上がっている自分を感じた。
「羨ましい」と言われた。
(本当は「妬ましい」じゃないの?)
そんな考えが頭をもたげる。
「妬ましい」と思う側から、「妬ましい」と思われる側になったのだ。
それに続き、美緒も口を開いた。
「羨ましいよね! あたしなんか、彼氏と喧嘩ばかりで……。莉子の話を聞いていると、初々しくて、すっごい幸せそうだなあって思う」
そんな言葉に、更に嬉しさが増す。
(そうだ! あたしは今幸せなんだ……)
一日中悩んでいた自分が、馬鹿みたいだった。
でも、それは、嘘なのだ。
実際は、何度か喋ったことがあるという程度。
(だったら、嘘を本当にすればいい。付き合えばいい)
そうか。本当に付き合えばいいんだ!
嘘を本当にすればいい。
そうすれば……
(あたしは、本当に弘君の彼女になる)
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