ずれていく現実

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 今日の学校に向かう足取りは、昨日と違って軽かった。  答えを出せた気がする。 (あっちもあたしのことを嫌ってるはずがない)  そんな気がして来た。  菫達も、似合ってるって行ってくれる。 (結子は、この間のあたしみたいな気分に違いない)  そんな邪な思いが、芽生えていた。  なんてことを考えているのだろう。結子は、大切な友達だと言うのに。  でも、間違いなくその思いは私の心の中の独白だった。  背筋が寒くなったような気がした。 「おはよっ」 靴箱で靴を履き替えている時に声をかけたのは、結子だ。 先ほどの考えが頭によぎり、う、うん、と微妙な返事になってしまった。  結子はそれをどう受け取ったのか、にっと笑った。眩しくなるような笑顔だった。 「幸せボケになってる!」  そんな一言を喋ったあと、寂しそうに、あのね、と続けた。 「ずっと考えてたんだけどさ。ぶっちゃけると、莉子が妬ましかった! みんな、次々に彼氏出来るんだもん、取り残された気がしてた……」 まぁ、こんなこと言ってんのも、ぶちまけた方があたしの心が軽くなるからだけど。 結子は続ける。 「でも、結局あたしはあたしなんだよね。彼氏なんて、作ろうと思って作れるもんじゃないし。やっぱ、夢に一直線! があたしらしいもん」  そして、絶対に国と国の掛け橋になるっと、締めくくった。 その笑顔は照れくさそうにしていたけれど、誇らしげでもあった。 (意味分かんない。そんなことあたしに言ってどうするの?) そうだよ。結子が何を言いたいのか分からない。 曖昧に頷いてみたけれど、悶々とした気持ちが収まらない。 (そんなこと言って、妬ましいって思っているんでしょ。あたしに彼氏がいることが!) どうせ、そうに違いないのに。  いや、違う。あたしには、彼氏なんていない。 (でも、いづれ本当になるんだから。同じことでしょう)  それもそうか。
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