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プロローグ
「エレノア・ケアード。この場をもって、君との婚約を破棄させてもらう」
アッシュクロフ王立魔法学園の大ホールでは、華々しく卒業パーティーが開かれていた。
それなのに、王太子ジェラルドの声が高らかに響く。その内容は、卒業パーティーにふさわしいとは思えないものだ。
姉のエレノアの卒業を祝うために、両親と一緒にこの場にいたセシリアは、何が起こったのかと目をぱちくりとさせた。手を繋いでいる母親でさえも、呆然としていた。
ホール内は、楽団の音楽もやみしんと静まり返る。
太陽のような緋色のドレスに身をつつむエレノアは、琥珀色の目を大きく見開き、ジェラルドを真っすぐに見据える。
キリッとした紺碧の瞳、すっと通った鼻筋に、艶やかな唇。絹糸のようなさらりとした金色の髪を引き立てているのは、彼が身にまとう金モールの濃紺のジャケットだろう。一国の王太子として見目麗しい姿だ。
それに対してエレノアだって負けてはいない。仮にも王太子の婚約者なのだ。庭園に咲き誇るような勿忘草色の髪はすっきりと結い上げられ、清純さを醸し出している。ぱっちりとした二重の瞳に、ふっくらとした唇も愛らしい。
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