Mercury Lampe

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自分には欠けたものがあると誰しも感じているし、それを埋めたいと思って生きている。        自分に欠けたものを捕っていくことが成長するということなら、水銀燈は薔薇乙女シリーズの中でただひとり「もっと成長したい」と思っている人形だと言えるかもしれない。     もっとも、その方法が不隠だし〔姉妹たちから命を奪わなければならない〕   アリスになることが成長なのかどうかはいささか疑問がつくけれど。    生まれながらにしてパーツが欠けている、ジャンクドール、水銀燈は、生まれながらに不治の病を抱えためぐをどう思ったのだろう。自らをポンコツと呼び、まともに生きられないのなら早く死んでしまいたいと、めぐ、は言う。     そんな彼女に水銀燈は、ローザミスティカの力をつかって命をあげたいと思うのだ。          それは、自分の悲劇を美しいと感じている幼い、めぐに、大人になる機会を与えるということだし、「あなたは決して無価値なんかじゃない生きていく価値がある」という水銀燈の静かなメッセージでもある。  何が欠けていようとも、あなたには価値がある。  本当は彼女が誰かにそう言ってもらいたいのではないだろうか。
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