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「ジルベール様。新しいブレンドティーもありますから、早く行きましょう」
「そうでしたね」
夢で見た悲劇ではなく、この先も続く幸福を噛みしめる。
「ジルベール様。愛しています、どうか、この先も私の手を、私を離さないでください」
「──っ」
そう囁くように告げると、ジルベール様は目を見開いて少し固まっていた。「唐突に変なことを言ってしまったのでは?」と思ったけれど、彼は嬉しそうに微笑んで唇に触れた。
甘くて、ついばむキスから、どんどん深いものになっていく。
「ええ。離しませんよ。二度と貴女を攫わせませんし、傍に居ますし、アリシアを離しません。もう、怖い思いをするのも、後悔するような恐ろしいことも起きませんし、起こさせませんから」
「ジルベール様」
ガゼボのある庭園に出ると、待ちくたびれたと欠伸をする大怪猫のルアーノに、シフォンケーキを切り分けているミルティア、お茶の準備をしている執事のセバスが目に入った。
一瞬だけれど、神々しい神様のような存在が私たちを祝福しているような、そんな温かな風が吹いた。
私とジルベール様はお互いに目を合わせて、自然と口元が緩んだ。
なんとなく神様から祝福をもらったような気分になる。
ああ、きっとこの先、私の記憶が欠如することはなさそう。そうなんとなく思えた。
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