昼休みの屋上

1/12
前へ
/55ページ
次へ

昼休みの屋上

 本校舎の屋上は、夏休みが明けた9月でも十分に暑かった。  日陰にいれば少しはマシかと思っていたものの、首筋に汗が伝った。  まったく。夏というのはいつ終わるんだ。  不意に髪を揺らした風は、思いのほかぬるかった。耳元を通り過ぎていく風が心地よくて目を閉じた。食後であることも相まって睡魔が襲い掛かってきた。  このまま身を委ねてしまおうかと思い始めた頃、誰かに肩を揺さぶられた。  誰だ、私の眠りを妨げるのは。  重たい瞼を気合いで持ち上げた。知らない男子生徒の姿が見えた。第一ボタンを開け、ネクタイを少し緩めている。うちの高校では体操服以外に学年を判別するものがないから、彼が何年生であるのか分からない。私と同じ1年か、それとも先輩か。  私は欠伸を噛み殺しながら、何の用かと訊ねる意味を込めて首を傾げた。 「大丈夫?」  彼は、はっきりとした口の動きで私の体調を案じてくれた。眉尻を下げて心配そうに私の顔を覗き込んでくる。  重たい頭を無理やり動かして頷いた。  とてつもなく眠たい。今すぐ寝たい。誰かここに布団を敷いてくれ。いや、流石に熱中症になるかな。 「……」  彼が口をパクパクと動かしているけれど、私の瞼は睡魔に負けた。

最初のコメントを投稿しよう!

1人が本棚に入れています
本棚に追加