37人が本棚に入れています
本棚に追加* 別れ
「親も友達もいらない‥‥俺は敦仁がいればいい。今夜8時に⚪︎×公園で待っている‥‥」
「うん。僕も、父さんも母さんも、お姉ちゃんもいらない。哲がいればいいよ」
まだ十三歳の二人の少年は今夜、家族を捨てて町を出て行く事に決めた。
年の割には少し大人びた大柄の少年の名前は《元木哲(モトキ サトル)》
小柄で少女めいた容貌の少年の名前は《斎藤敦仁(サイトウ アツヒト)》
二人は幼いながらも愛を誓い合った恋人同士であった。
そして、約束の時間より三十分ほど早く公園に来た哲はボストンバッグを地面に置き、ブランコに腰掛けた。昼間は晴れていたのに、今は黒い雲が月も星も隠している‥‥‥
『早く来い、敦仁‥‥』
濡れる前にバスに乗りたかった。
なのに‥‥‥
敦仁は、約束の時間どころか一時間過ぎてもこなかった。
『なんで?何かあったのか。親に見つかった?それでも来るよな、約束‥‥したもんな』
やがてポツポツと降ってきた雨は、次第に土砂降りになった。それでも哲は敦仁を待った。
夜通し、ずぶ濡れになりながら待った‥‥‥
明け方犬と共に散歩をしていた老人が、倒れている哲を見つけて、救急車を呼んでくれたお陰で二日間の入院と,三日間の自宅療養でスッカリ回復した。そして、来なかった理由を聞く為に敦仁の住むボロアパートに行ったが、其処には誰も居なかった。そして、学校にも敦仁の姿は無かった。
敦仁と、その家族は忽然と姿を消してしまったのだった‥‥‥‥

最初のコメントを投稿しよう!