ブルーといえば

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「アレ、買っといてね」 今朝。唐突に妻から言われた言葉を反芻する。 "アレ"とは果たしてなんだったか。食パンや醤油やマヨネーズといった調味料ではない。それは週末の買い物で買ってくるし、急に減るものでもない。万が一、たまたま見逃していたとしても、スーパーの営業時間に帰れるのは妻だけだ。最近帰りが深夜になりがちな自分に、お高いコンビニで買ってこいとはならないだろう。 先の推測から、日用品もまずないだろう。が、深夜にやってるお店はかなり限られる。コンビニ限定のスイーツやお菓子も考えられるが、それも深夜帯は売り切れていることも多い。可能性としてはかなり低い。 では、果たしてなんだろう。 「ああ、まかせてくれ」 安易に返事をしていた自分が悔やまれる。いや、そもそも、今朝の自分には"アレ"が分かっていたのか。否だ。それならこうは悩まない。 だが、妻が"アレ"で通じる程度には、自分が認識できるもののはず。 さて、それはなんなのか。 家の近くから会社付近の店へと対象を広げれば、もう少し選択肢は増える。残業とはいえ、途中の休憩時間に少し外に出るぐらいはできるし、夜やってるお店もかなりある。 食べ物は除外するとしても、本屋に服屋、眼鏡屋にブランドショップなどなど。 最後のブランドショップは冗談としても、駅前の立地が幸いして、かなりの数のお店がある。 本屋だとすれば、妻が読んでる週刊誌か。だが、それは近所のスーパーで売っている。服屋たろうか?そういえば、最近はあまりお洒落な服を着ていない。年齢もあるかもしれないが、前はオシャレが大好きで、毎月のように新しい服を買っていた。 なら、服だろうか?だとすれば何を買う? 妻は童顔で身長が低いこともあり、かなり若くみられる。それこそ、自分の娘と歩いていると、お世辞もあるかもしれないが、姉妹に間違われる事もあるといっていた。(この時、まさか妻の方が妹に思われていたと笑いながら言っている妻に対し、娘はかなりブチ切れていた) それこそ、今の時代に娘ぐらいの年齢なら、ロリータみたいな格好をしてみたいと言っていた。 だが、ここでロリータ服を買うほど愚かな私ではない(というか、売ってる店に入る勇気もない) さて、ではなにがいいだろうか? 仕事着ではないからスーツのようなものは論外か。ならば華やかなワンピースとかは? なるほど、それはありだ。新しい服で一緒にお出掛けもいいではないか。 じゃあ、色は何がいいだろうか?情熱的な赤やオレンジ?それとも爽やかなブルー? 快活な性格の妻には赤やオレンジがいい気もするが、知的な面もある妻にはブルーも似合う。 あぁ、何がいいかと思った瞬間に頭を振る。 多分、そういうものではない。 妻はかなり気軽に"買っといてね"と言っていた。何かをプレゼントしてほしいという感じではなかった。 しかし、ブルーという単語に引っかかりを覚える。 ブルー、青色、いや違う。あくまでブルーという言葉に覚えがある。 ブルー、ブルー。 頭の中で何度も反芻しながら仕事をしているうちに、時刻は夜九時をまわり、もう空いてるお店もほとんどなくなってきた。仕事も一応終えたが、何を買うのかモヤモヤしたままだ。 「諦めて聞こうかな」 ガッカリされるのは忍びないも、違うものを買うよりかはマシと思いスマホを取り出した時、夜遅くに未だ煌々と輝く家電量販店が目に入る。そして手書きのセール品が目に留まる。 『本日、録画用ブルーレイディスクが半額』 そうだ、撮りためていた朝の連ドラの保存用のディスクを今度買ってきてと週末に言われていたのだ! スッキリした気持ちで家電量販店でブルーレイディスクを買い、家に戻り妻に渡すと、不思議そうな顔をされ、少し残念な顔をされた。 「あぁ、それもだけど、違うのよ。トイレのやつ!」 膝から崩れ落ちる自分。そう、妻が望んでいたのは、トイレの消臭剤だった。

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