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そうして二人でコンビニまで歩き始めたが、二人とも何も話さなかった。タケシは事件のショックから立ち直っていなかったし、俺はそんなタケシに気を遣うことが馬鹿らしく思えて何も言わなかった。
小学校からの帰り道を少し外れ、田んぼの中の県道沿いに歩くとコンビニが見えてきた。と同時にあの踏切も目に入った。タケシの歩くスピードが遅くなった。俺はタケシを待つことなく、コンビニへ歩いて行った。
俺が二人分のアイスを買ってコンビニを出ると、コンビニの駐車場の隅でタケシがうずくまっていた。
「ほい」
うずくまるタケシの顔の前にアイスを一本差し出した。タケシがアイスを受け取ってから俺はタケシの横に胡坐をかいて座った。
町唯一のコンビニは平日の昼過ぎにも関わらず客が途切れず来ていた。ほとんどが車で来ていて、その駐車場の一角に座り込んでいる子供は邪魔なんだろうなと思った。それでもタケシがへたり込んだこの場所は守ってやろうと思い、俺は立ち上がることをしなかった。
すると突然、踏切の警報音が鳴りだした。タケシは体をビクンとさせた。
俺は踏切をにらみつけた。踏切の遮断機の下にはたくさんの花束とお菓子と飲み物が供えられていた。電車が踏切を駆け抜けた。巻き起こった風が花束を散らした。踏切を駆け抜けた電車が見えなくなるほど遠くに走り去ると、駐車場はいつもの田んぼの中の静けさに戻った。
「ごめん」
タケシがボソッと言った。
「なにが?」
タケシは泣き顔を見せないように俺に背中を向けたまま顔を上げた。そしてアイスを一口かじった。アイスが歯に沁みたのか、タケシが「はう」と情けない声を上げた。
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