Act.2

1/1
前へ
/5ページ
次へ

Act.2

「ハァ……」  インフィニティブルーこと、青柳碧流(あおやぎ へきる)は深い溜め息を吐いた。 「どうした? 最近、元気ないけど」  イエローの日向(ひゅうが)ヒマワリが、碧流の顔を覗き込む。  ここはインフィニティファイブの秘密基地。ゴールドの大王子金人(だいおうじ かねと)以外のメンバーは待機している。 「具合が悪いなら、私が診ますよ」  グリーンの緑川千草(みどりかわ ちぐさ)も心配そうに近づいてきた。彼は医師でもあるのだ。 「心配をかけてすまない、おれは大丈夫だよ」 「そうは見えないけど? なんか悩みとかあるんじゃね?」 「碧流、オレたちは仲間だろ? 困っていることがあるなら、何でも話してくれ」  ピンクの桜木桃華(さくらぎ ももか)とレッドの赤羽(あかばね)ヒイロも加わる。 「いや、悩みって言うか……その……おれって、このチームに必要かな?」  思わぬ碧流の告白に、残りの四人が眼を丸くする。 「なに言ってんだッ? ブルーがいなきゃ、インフィニティファイブじゃないだろ!」  ヒイロが身を乗り出す。 「そうかな……インフレーダーのときも、おれだけ武器が使えたのに、結局役に立たなかったし……」 「それはヘキッチの武器がショボいから……」 「シッ」  桃華の言葉をヒマワリが人差し指を口に当てて遮る。 「そうなんだよッ、どうしておれは弓なんだ? イエローはマシンガン、グリーンはバズーカ、ピンクに至ってはレーザーガンなのにッ?」 「オレは剣だぜ?」 「剣は主役の武器じゃないかッ。それにレッドには必殺技のシューティングスターがあるし」 「そ、それは……ア、アハハハ……」  ヒイロは仲間たちに視線を向けて助けを求めた。 「君はそのレッドのライバルです、もっと自信をもって」  千草が優しく励ます。 「たしかに以前はそうだった。でも、金人が加わってからそのポジションも奪われたし……」 「あぁ、ブルーって、そういう感じのキャラだよねぇ~」 「桃華ッ」  ヒマワリが拳を握ってゲンコツをするジェスチャーをすると、桃華は舌を出して自分の口を両手で覆う。 「桃華の言っていることは事実だよ。  名乗りだって、レッドが『無限に膨らむ希望』、イエローは『絶えることなく湧き上がる勇気』、グリーンが『終わりなき未来』、そしてピンクが『どこまでも続く愛』。  なのにブルーは『果てしなく広がる空』って、勇気や希望とかじゃなくて、空の状態を言っているだけだ」  碧流は頭を抱えた。 「いや、それは碧流が悪いわけじゃないだろ」 「それなら、ゴールドも『黄金は永遠の輝き』なんて貴金属店の宣伝みたいな名乗りじゃん?」  桃華の発言に、ヒマワリは親指を立てた。 「たしかにそうだけど、それこそ大富豪の金人らしいじゃないか」 「でもさ、青は平和の象徴の色だし、地球だって青で表現されるだろ?」  ヒイロが励ますように碧流の肩を叩いた。 「ありがとうヒイロ。だけど信号機は青信号といっても、本当は緑だ」 「ナニ言ってんの? それならピンクも信号機にはないんだけど」 「桃華、だからそう言う問題じゃ……って、これは本格的にヤバイかも……」  ヒマワリが千草に視線を向けると、彼は深刻な顔でうなずいた。 「どうだろう、少し休暇を取ってみては?」  千草はあえて明るい声で碧流に言った。 「え?」 「そ、そうだよッ。最近、忙しかったし、おまえ、まとまった休暇を取ってないだろ」  ヒイロも千草に同調する。 「それはみんなだって同じだろ?」  桃華がビシッと手を上げた。 「じゃ、代わりにウチが休暇を……」 「あんたはしゃべるな!」  ヒマワリが桃華の腕をつかんで無理やり下げた。 「おれは……」 「碧流君、私たちはヒーローである前に一人の人間です。体調が良いときもあれば悪いときもある、それは精神状態も同じこと。時には休むことも大切な仕事となります。  わかりますね?」 「は、はぁ……」  碧流は仲間たちに押し切られる形で休暇を取ることになった。

最初のコメントを投稿しよう!

5人が本棚に入れています
本棚に追加