Side 龍一郎
「お前がいてくれて助かったよ」
頼まれていた書類を持ってきた俺に、祥吾はため息交じりに声をかけた。
目の前でうなだれ、小さく肩を落とす友人を前に、俺は言葉が見つからず家の中を見渡す。
ここは、最近ずっとゴタゴタしていた祥吾の自宅だ。
かつては完璧に整えられていたこの部屋も、今は見る影もないほど荒れていて、俺はため息交じりに口を開いた。
「少しは片付けろよ」
床に落ちた新聞を拾いながら、ソファに座る祥吾に声をかけるが、返事はない。
仕方なく、俺はざっと部屋を片付け、顔色の悪い祥吾のために夕食を作り始めた。
「相変わらず龍は家庭的だな」
そんな俺を見て、祥吾が小さく笑いながら呟く。
そして、ポツリと話し始めた。
「全部幻想だったのかな。俺の独りよがりで」
そう――こいつは今、初めて惚れた女に騙され、会社の機密を漏らされて窮地に立たされている。
最初のコメントを投稿しよう!