プロローグ

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男はただひたすらに走っていた。薄暗い電灯の明かりしかないような夜の街を。 男は自分が今見た[もの]の存在を信じられないまま、その[もの]から逃げていた。 この日男は仕事を終え家路につく途中、懐かしいやつに出会った。そいつと遅くまで飲んでしまい、ある意味華麗なステップで家に向かっていた。 しかし、酒のせいか男は見知らぬ道に迷い込んでいた。男はよくある事だと気にせずに歩いていた。 そして、人通りの少ない通りにさしかかった時、不思議な音が聞こえてきた。 小さな子供が慌ててものを食べるそれのような。 男は音のする方を覗いてみる事にした。細くて暗い路地から聞こえてくるようだ。 慎重に一歩ずつ近づいていくと、段々音が大きくなっていく。男は音のする闇の奥を覗いてみる。 雨は降っていない筈なのに地面はぬれて光っていた。そして水たまりの中心には人、いや、さっきまで人だったものが転がっていた。 側には犬のようにも見えるが、まったく違う六本足の[もの]が陣取り、食事をしていた。 なんでこんなものが…。やっぱり酒を飲み過ぎたな。 男は夢をみている気分になっていた。
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