バスを待っていた。三時間に一本しかやって来ない、田舎様式のシケたバスを。
季節は春、まだ冬の寒さが抜けきらない微妙な休日。曇天の下を吹き抜ける風は冷たいが、トタン造りの停留所は思いの外頑丈で、じっと待っている分には気にならない。
丁度黄昏時ではあったが、赤黒い暮れ日も分厚い雲は貫けず、灰色の寂寥が辺りを包んでいる。退屈さを埋めるのは、心許ない波の音ばかり。海風で痛んだベンチに腰掛け、仄かな磯臭さに身を委ねながら、ここ二日間の出来事を思い返してみる。
儚いバカンスだった。旅に出るのは久しぶりで、取り分け執着があるわけでもなかったのだが、此度の休暇には少なからず期待していた。
現状に不満があるわけではない。やれブラック労働だの、パワーハラスメントだのと騒がれる昨今、自分は比較的マシな企業に就職できたと思う。残業は滅多に無いし、業務内容も難しくはない。分からないことがあっても、先輩や上司に相談しやすい環境なのも有り難い。
それでも、一週間二週間と決まり切ったルーティーンに従っていれば、何だか物足りなくなってくる。息の詰まりそうな毎日に反比例して、旅人の魂は疼いていく。
故にこそ、俺はこの連休を利用して、このろくでもない町を訪れてみたのだ。
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