―往路での追想―

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そんな自分に、ないものを求めていたのかもしれないが、学校で密かに想いを寄せていたのは水泳の得意な沙苗だった。 沙苗は流れるような髪が綺麗で、どこか寂しげで印象的な瞳の女の子だった。 沙苗は、スイミングスクールに小さい頃から通っていて、とても水泳が上手だった。 校内ではもちろんのことだが、市内の大会でも入賞するほどだった。 克樹は、体育の授業の水泳の時間には、伸びやかに力強く泳ぐ沙苗の姿を、密かに目で追っていたものだった。
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