―往路での追想―

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自分で今思うと、克樹は幼い頃、人に自分の気持ちをうまく伝えられない子供だったと思う。 現に沙苗に対しても、何か自分の想いをぶつけたりすることはなかったし、その想いが自分の中にあることさえ他人に打ち明けたりはしなかった。 親友や家族にさえも。 ただ、沙苗と話をしなくてもそばにいるだけで癒されているような、満たされた気持ちを感じる時があった。 (沙苗ちゃんに対しては、何でそう感じたのか…別に沙苗ちゃんが自分に好意を抱いていたかさえ分からないのに…) 克樹は今でも不思議に思う。
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