―序章―

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翌日、出勤して朝一番に克樹は、直属の上司である田嶋の所へ行き休暇届を提出した。 「お前が休暇だなんて珍しいな。たまにゆっくり休むのもいいもんだけどな。どこかに出かけるのか?」 田嶋は書類にさっと目を通してから判子をついて、克樹のほうを見上げて聞いてきた。 田嶋は今年から克樹の上司になったが、克樹が採用された年の新採用研修の時にグループワークで指導されたことがあるため面識があった。 すらりとした長身で一見体育会系に見えるが、実は良く気が利くし、どこか優しい雰囲気があり職場の女性職員からも人気がある。 部下の面倒見も良く克樹も尊敬している上司だ。 「ここ数年、というか実は就職してから実家へ帰っていないもので、お盆もありますし実家へ帰ろうかと思っています。 両親にもたまに顔を見せないと、と思いまして。」 克樹が田嶋へそう話すと、 「そうか…お父さん、お母さんも久しぶりに帰ったら喜ぶだろ、仕事のことは気にしないでゆっくり休んで来い。」 田嶋は優しく微笑んでそう言った。 その笑顔に克樹もつられて微笑んだ。 田嶋の笑顔というか眼差しにはそんな力があった。
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