―往路での追想―

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数日が経ち、実家へ帰る日には準備万端で克樹は駅のホームにいた。 休暇届を出した日の帰りのうちにあらかじめ切符を取りに行っておいたおかげである。 周りはお盆や夏休みで故郷へと向かう人達で溢れていた。 ふと見ると、小さな子供がリュックを背負い帽子をかぶって立っている。 手を繋いでいる母親に、笑いかけている姿がとても可愛らしい。 (俺にも、あんな頃があったんだよな…) 間もなく、新幹線がホームへと到着したので、克樹は足早にキオスクでお茶と雑誌を買い、自分の窓際の座席を見つけて座った。 克樹は窓際の席が好きだった。 流れていく風景を眺めながら、ぼんやりと物思いに耽ったりする、ゆっくりと流れていくその時間が好きだった。
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