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黒板に「桐生まり」と書いた後、彼女は深くお辞儀をした。
「きりゅうまりです。よろしくお願いします」
3年1組、夏休み明けの2学期の初日に彼女は突然転校してきた。可愛らしく端整な顔立ち。彼女は男子生徒の間では間違いなく人気となるだろう。しかしそれは僕とは無縁のことだと思っていた。
「桐生さん。後ろの空いている席に座って」
担任が言うと、彼女は元気に「はい」と言って、窓際の列の一番後ろの席まで移動して着席した。空いていた席。それは僕のとなりの席だった。
「倉沢君。よろしくね!」
「え?」
僕は彼女と初めて会ったのに。ネームプレートをつけていない高校なので、僕の名前を彼女が分かるはずがなかった。
「どこかで会った?」
「いいえ」
そう言って彼女は微笑んだ。僕は彼女を見つめた。そしてその透き通る瞳に吸い込まれそうになった。教室中がざわめきはじめて、僕は正気に戻った。

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