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「これ五千三百円で買った。いくら出すんだ」
カチンと来て俺は拳を強く握ったが、ここに来て誕プレ計画ご破算はいただけないと、その拳で自分の太ももを殴った。
相談しようと横を向いた時、またもキタが俺に目くばせをしてきた。任せた、と俺はうなずいた。
「俺たちは椎葉の買値で買い取るつもりだったよ。つまり五千三百円だ」
俺たち三人は驚いた。驚いて止めに入ろうとする隙を与えないようキタは言葉を続けた。
「ただ、椎葉はそれでいいのかな?」
「え?」
椎葉は何を言われたのか理解できないで聞き返した。
「椎葉は中古の、しかも飽きて二度とプレイしないだろうゲームカセットを定価で売っていいのかなと」
椎葉は戸惑っていた。
「良いも何も……」
「俺たちが椎葉を今後も頼るのか、椎葉に頭を下げるのかは今にかかっている」
「は?」
キタはグイッと椎葉の方へ身を乗り出した。
「椎葉はいくらで売りたい?」
お願いして売ってもらう立場が、いつの間にか、お願いされて買ってあげる立場になっていた。
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