パート1 黄金の世界線

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パート1 黄金の世界線

 この世に数多ある平行世界線。  同じ名前と外見の人物でも、過ごす世界線が1つ変わるだけでその生き方や人生の結末はガラリと変わる。  例えば、ここに寝坊して朝の出勤に遅刻しそうな田中という人物がいる。  Aの世界線で生きる田中は大急ぎで自宅を飛び出したが、焦るあまり地下鉄の階段を踏み外して足をケガしてしまった。  B世界の田中は開き直って二度寝をかましている。結果彼は翌日に会社をクビにされるが、後に米農家に転職し自分の肌にあった日の下での仕事を満喫する事になる。  ではC世界の田中はどうかと言うと、この世界で彼は大企業の若手社長になっている。 少し会議に遅れて部下を待たせる事など何のその。 専属の運転手がハンドルを握るリムジンに乗って優雅に出勤中だ。  今度は少し離れてFの世界線を観てみよう。  ここは今までと変わってファンタジーな世界のだ。砂漠の真ん中で田中は巨大な剣を構えて赤い鱗の飛竜と激闘を繰り広げている。  だがあっという間に飛竜のブレスに焼き殺されて戦士田中の一生はあっけなく終わってしまった。  気を取り直して最後にY世界線の田中を見てほしい。ここでの彼は何と宇宙海賊の船長なのだ。 丸みを帯びた前衛的な形の宇宙船を駆り、仲間と共に銀河を大冒険していたが、途中副船長に裏切られて1人極寒の惑星に取り残されて力尽きる。  さて、ここまで様々な田中を見て貰ったが世界線はまだまだ無数にある。  これらの世界線は一見すると千差万別のように思えるが、大別すると2種類の物しかない事に気付いただろうか。  程度の違いはあれど幸せに生きていける世界と不幸な顛末を迎えてしまう世界の2種類だ。  幸福な人生を生きられるか否か。  それは世界線それぞれが持つエネルギー、いわゆる「フォース」の量で決まる。  フォースはその世界に流れる奇跡のエネルギーだ。多ければ多いほど、そこで生きる人や自然、物体にも多く分配されて幸せな流れに導かれていく。  逆に少なければ一部の生物しか幸福になれず、自然にも資源にも恵まれない歪な世界となってしまう。  ある時、万物に幸福を与える程の巨大なフォースを秘めた「黄金の世界線」が闇組織の科学者によって発見された。  この世界線の存在を観測した科学者は言った。  そこにある莫大なフォースを得た者は、己が望む全てを叶える神になれるだろうと。  この物語は闇組織「ヘルメス」の尖兵として下っ端構成員である32歳の中年男「三月(みつき) 灰卜(カイト)」が相棒の銀髪少女型ホムンクルス「ガルガ・ルーガ・ルー」と共に、フォース略奪の為に黄金の世界線へと旅立つところから始まる。

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