245人が本棚に入れています
本棚に追加
/189ページ
その中に、イナの家族の姿がある。
母は体の左から半分がなく、父の首から下は母に折り重なるようにあり、首は死体の裾に転がっている。
五つ上の兄の腕には大きな火傷の痕がある。
あれは、イナをかばって出来たものだった。
その腕だけが母の死体の上にあり、それ以外のモノは見当たらない。
大好きだった家族の成れの果てを目にしても、イナの瞳から涙は出なかった。
それどころか、イナは恐怖すら感じていなかった。
ただ、死体の山の前に座っていた。
最初のコメントを投稿しよう!