プロローグ

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その中に、イナの家族の姿がある。 母は体の左から半分がなく、父の首から下は母に折り重なるようにあり、首は死体の裾に転がっている。 五つ上の兄の腕には大きな火傷の痕がある。 あれは、イナをかばって出来たものだった。 その腕だけが母の死体の上にあり、それ以外のモノは見当たらない。 大好きだった家族の成れの果てを目にしても、イナの瞳から涙は出なかった。 それどころか、イナは恐怖すら感じていなかった。 ただ、死体の山の前に座っていた。
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