遮断機

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 仕事からの帰り道、近所の踏切近くにパトカーが止まっているのが見えた。  どうやらまた事故があったらしい。多いんだよな、あそこ。  でもそれには理由がある。あの踏切の遮断機は壊れていて、下りてこないことが多々あるからだ。  警報機は鳴っているのに遮断機が下りない。だからみんな、今なら行けるとたかをくくって踏切内に侵入し、列車と接触事故を起こすのだ。  点検の人がしょっちゅう遮断機の様子を窺いに来ているけれど、特に異常を見つけられずに帰って行く。だけど遮断機はまともに下りない。  その理由を俺は知ってるよ。見えてるからね。  遮断機の所にいる幽霊。最初は一体だけだったけど、特に死亡事故が起きた訳でもないのに次第に増えて、今じゃもう二桁数。 そいつらが、警報機が鳴り出すと遮断機に群がって、バーが下りようとするのを妨げる。  ああやって事故を起こして、あわよくば、仲間が増えるのを狙ってるんだろうな。  でも、連中のやってることもよくないけれど、一番いけないのは、電車が来ると判っているのに、遮断機が下りないからといって、無理に線路を渡ろうとする奴だ。  別にここは開かずの踏切って訳じゃないから、電車が通り過ぎるまで、ほんの数分待てばいいだけ。  それができないような性格だから、幽霊達の思うつぼみたいな真似をして事故を起こすのだろう。  警報機が鳴ったら、遮断機が下りなくても線路内に侵入しない。たったそれだけなんだから、みんなもっと守ればいいのにな。 遮断機…完

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