待てと云われて待つ奴がいるだろうか。幾度の呼びかけも無視して進むと、なぜか相手に立ちふさがれている。
「わっ」
あやうく衝突するところだった。由良はおおいに仰け反った。さして広くはない道で、どうやって追い抜かれたのだろう。一瞬前まで声は由良の背後からしていたのに。
「どうしてそんなにあわてて家を出たんだよ。ちょっと待ってくれたら、一緒に出られたのに」
のんびりした口調で未良は云う。双子といっても二卵性だから、その顔は全く由良と似ていない。嫌味なぐらい整っていて、おまけにそばにいると春の花々のような甘い香りがする。香水の類をつけているのではなく、幼い頃からそうだから、生まれ持った体質なのだろう。その点も、由良とは違う。
待ちたくないから先に家を出たのだと、由良は本音を云わない。この双子の兄に本音を云わないようになったのは、いつからだっただろう。
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