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結論から言えば、それは大いなる間違いであった。
と言うか間違いならまだマシな方で、見当違いも甚だしい。いったいこのときの僕は何を考えていたのだろう。
…何も考えていなかったに違いない。
はたして、これから僕が被る災厄のすべての元凶が、僕らの担任と共に現れた。
「紹介するぞ。転校生だ」
それだけ言って北川─ああ、これは僕らの担任の名だ─は、来たばっかりだってのにさっさと教室からフェードアウトしていった。
正直それで良いのかと思わなくもないが、わざわざ意見するのも面倒なので放っておこう。皆もそう思っているのか、半ば呆れつつ見なかった事にしているし。
とにかくそう判断し、転校生に視線を戻す。…ふむ。
転校生は、どこからどう見ても女の子だった。それも、美少女の部類に入ると思われる。出るとこは出て、引っ込むとこは引っ込んでるし。
そんな風にまじまじと眺めていると、彼女はゆっくりと腰を折り、鈴を鳴らすような声音で、
「双神久遠(フタガミ クオン)です。どうぞよろしく」
と挨拶した。
が、そんな事はどうでも良い。今なんか明らかに不自然なものが目に入ったぞ。
僕がその不自然なものについて確かめようと席を立つのと、
「ちょっと彰人! ヤらしい目でじろじろ見すぎ!」
との声が飛ぶのとはほぼ同時だった。
と言うことはつまり。
転校生─双神久遠の過剰警戒を招くわけで。
これ以上の行動は慎まなければならなくなるわけで。
「違っ…そんなんじゃなくて…」
もにょもにょと口ごもりながら席に座り直す僕。
クラスの半分からは呆れたような、もう半分からは生暖かいような気味の悪い視線を感じる。ちくしょう、そんな目で見んな。
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