プロローグ

2/12
7人が本棚に入れています
本棚に追加
/12ページ
結論から言えば、それは大いなる間違いであった。 と言うか間違いならまだマシな方で、見当違いも甚だしい。いったいこのときの僕は何を考えていたのだろう。 …何も考えていなかったに違いない。 はたして、これから僕が被る災厄のすべての元凶が、僕らの担任と共に現れた。 「紹介するぞ。転校生だ」 それだけ言って北川─ああ、これは僕らの担任の名だ─は、来たばっかりだってのにさっさと教室からフェードアウトしていった。 正直それで良いのかと思わなくもないが、わざわざ意見するのも面倒なので放っておこう。皆もそう思っているのか、半ば呆れつつ見なかった事にしているし。 とにかくそう判断し、転校生に視線を戻す。…ふむ。 転校生は、どこからどう見ても女の子だった。それも、美少女の部類に入ると思われる。出るとこは出て、引っ込むとこは引っ込んでるし。 そんな風にまじまじと眺めていると、彼女はゆっくりと腰を折り、鈴を鳴らすような声音で、 「双神久遠(フタガミ クオン)です。どうぞよろしく」 と挨拶した。 が、そんな事はどうでも良い。今なんか明らかに不自然なものが目に入ったぞ。 僕がその不自然なものについて確かめようと席を立つのと、 「ちょっと彰人! ヤらしい目でじろじろ見すぎ!」 との声が飛ぶのとはほぼ同時だった。 と言うことはつまり。 転校生─双神久遠の過剰警戒を招くわけで。 これ以上の行動は慎まなければならなくなるわけで。 「違っ…そんなんじゃなくて…」 もにょもにょと口ごもりながら席に座り直す僕。 クラスの半分からは呆れたような、もう半分からは生暖かいような気味の悪い視線を感じる。ちくしょう、そんな目で見んな。
/12ページ

最初のコメントを投稿しよう!