エピローグ

6/6
前へ
/206ページ
次へ
 そう返した声は、自分でもわかるくらい震えていた。 「うん。突然かもしれないけど──ずっと言いたかった」  そう言って、彼が優しく私を引き寄せた。  その体温に包まれた瞬間、冷たい空気も、不安も、少しずつ溶けていくのがわかる。 「咲がいいなら、いつでも鍵、渡すよ」  そう囁いて、彼の指先が私の頬に触れる。  顔が近づき──唇が、柔らかく重なる。  あたたかくて、静かで、少しだけ切なくて。  私の中に残っていた迷いや寂しさを、すべて包み込むような、深く優しいキスだった。  彼の腕の中で、私はそっと目を閉じる。 「──毎日、あなたに『ただいま』と『おかえり』が言えるね」  唇が離れてからそう言うと、彼は目を細めて、どこまでも優しい笑みを浮かべた。  心ごと差し出すような、あたたかい光のような笑顔だった。  ──氷の壁の向こう側にいたのは、こんなにも、ぬくもりに満ちた人だった。  私はそっと背伸びをして、もう一度、彼の唇にキスをした。

最初のコメントを投稿しよう!

949人が本棚に入れています
本棚に追加
広告非表示!エブリスタEXはこちら>>