~ 淡い心模様 ~

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雨がしとしと…京の都を濡らしてゆく。 桜花も、雨露に濡れ…春の冷たい雨は、朝方から降り続いている。 雅は、御簾(みす)を少し上げ外の様子を伺う。 今日は雨…月は顔を出すかしら … ふと昨日の事を思い出し…雅の透き通る様な白い頬は、桜花色に染まった。 『わたくしは…何を考えているのかしら…』 昨日は、とても不思議な出会いがあった。 高麗笛の音と…優しい男人の声… 今まで、感じた事のない…チクリとした心の臓の痛みは、一体何なのだろうか…。病にでもかかってしまったのか…雅は、頭を働かせるが…一向に解らない。 溜め息を軽くつくと、雅は笛を取り出し眺める。 ~とても…優しき笛の音…~ 双方の音が交じり合っても…崩れる事なき…音色…。 とても心地良く…心が温かい。 『…またこの様な月の夜に…共に奏でて頂けませぬか?』 男人の言の葉…。嘘か…真か解らない。顔も知らぬ男人…。 一体…誰だろうか…。 父様や兄様の顔見知りだろうか… 雅の心や頭の中は、昨夜の月夜の男人の事ばかり…。 ~ 何かに捕われた感覚 ~ 不思議な…感覚がチクリと刺す…。 淡い何かが…私を襲う。 ~ 春雨の心模様 ~
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