~ 第二十六花 血の惨劇 ~

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“ 犠牲者の血が流れる…その鮮血を欲した悪鬼は… 怨みを募らせた 人形を…操る… ”       友里の怒鳴り声で一瞬にして静まり返った。父親は、豹変した息子に驚き目を見開きながら、金魚の様に口をぱくぱくとさせながら友里を見た。 『と…友里っ!』 声が恐怖で震え吃りながら、父親は叫ぶ。 『お前は…いつもそうだ…。私を…私を虚仮(こけ)し、私を見下す…許せぬ…!』 胸倉を掴んでいた手を退け、腰にさしている刀を抜いた。 刀には、べとりと…血がこびりついたままだった。 その血塗られた刀を見た者達と父親は、“ひぃ!!”と叫び後退りをした。 雅も笛を持っていた手を、がたがたさせ地面に笛を落とし、悲鳴を上げた。 忠行は、印を結び術を唱え様としたが、友里の内に居る悪鬼が邪魔をし術が効かない。  腰を抜かし父親は、じゃりじゃりと玉砂利を鳴らす様に、身体を這わせ後ろに下がっていく。 『お…お主…ま、まさか!睦と花を…っ!』 身体を這わせ後ろに下がりながら、友里を指差し言う。 友里は父親の問いかけに、喉の奥でくつくつと笑うと…妖艶さと怨みが混じった様な目付きをし父親を見る。 『御名答…。老いたお前でも解るか…。試し斬りをしたまでだ!ふははははっ!』 高笑いをする。高笑いは屋敷にこだまし皆(みな)をぞっとさせる。父親は、涙を流し友里を見る 『と、友里…すまぬ…許してくれ!』 涙を流しながら父親は謝罪をする。それを見た友里は怪訝な顔をした。 『…謝ってどうしようと?許しを請い命拾いをしたいか…?ふっふっふっ…はっはっはっ…死ねっ!』 友里は血塗られた刀を振り上げ父親を斬る。   『グハッ!!』 恐怖に周囲は叫びを上げ女人達は、腰を抜かし地面に崩れる。忠行は、ちぃっと舌打ちをし人を掻き分け近くに寄る。 斬り方が甘いのか、父親はぴくりぴくりと動き、断末魔の声を上げる。 『と…と…も…さ…と……』   血飛沫を浴びた友里は、赤き月に照らされ…妖艶に笑う。 『さらばた…父上…。』 呟くと心の臓を一突きした。血まみれになりじゃりっと身体を崩し事切れた。 周囲は騒然となり叫びだし逃げ惑うが…戸が固く閉じられている。怨霊の仕業だと察知し、忠行は印を結び術を唱える。 友里は、髪を掻き上げ狂った様に笑い始めた。    …赤き月…虚しく鳴く鵺… 血の惨劇が…今…幕を開けた…     “ 血ガ欲シイ…モット…赤キ鮮血ヲ…フッフッフッフッ…”
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