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“ …哀れな男だ…己の欲望 煩悩に負け…鬼と化した…哀れな男… ”
友里は狂った様に片手で自分の髪を掴み父親の骸(むくろ)を踏み付けながら笑う。
『ハッハッハッハッ…』
笑いながら周りを見る。
周囲の者達は声を上げ後退りをする。
帝の護衛で来ていた検非違使(けびいし)や近衛府(このえふ)や武士が刀を抜く。
『友里殿止められよ!刀を引き正気に戻られよ!』
検非違使の一人が友里に声を掛けるが…友里は妖艶に笑いながら…
『フフフッ…正気?フフフッ…私は……正気だぁ!』
友里は言いながら、検非違使に向かって刀を構え走る。
襲い掛かられた検非違使の一人は刀を構える。
がしゃんと刀同士がぶつかり、物凄い音がした。
ぎりぎり…じりじりと二人は睨み合うが、友里の力が強まり検非違使は跳ね返される。
友里は、にやりと笑い刀を振りかざした。
ざしゅっ!
『ぐぁ…!』
検非違使は、肩を斬られ倒れる。他の検非違使や近衛府も刀を構え、友里を止めるべく向かっていく。
その時!
友里の身体が修羅の妖力により、浮き上がる。
黒き気を放ち、友里が“うぉーッ!”と叫ぶと、友里の力が漲(みなぎ)る。恐れを成して逃げ惑う公家の者達、それに目を付けた友里は地に降りると公家に襲い掛かる。
『止めるでおじゃる!!ギャーッ!』
友里は刀を公家の男に突き刺す。男は事切れがくりと膝から崩れ友里の足に身体を預ける。
刀を抜き身体を預けた男を、ちぃっと舌打ちをし蹴り上げる。
修羅の妖力で強まった力は、軽々と公家の男の骸を飛ばした。
それを愉快そうに友里は笑い、次の獲物を探る目で周りを見る。
“ アノ男ヲヤラヌノカ…? ”
あの男とは将文の事。友里はにやりと不気味に笑うと…
“ 楽しみは…最後まで取っておく性分でね… ”
と修羅に言った。周りを見ると先程肩を斬った検非違使が目に入る。検非違使の男は、目線に気付き後退りをする。
友里は …獲物を得た様に…
不気味に…笑う
“ 数多の血が流れゆく…早く何とかせねば…晴明よ…こやつは手強いぞ… ”
※検非違使(けびいし):現在で言う警察や裁判を行う人。
近衛府(このえふ):六衛府ロクエフの一つで、宮中の警備や行幸の供奉グブを役目とした武官の役所。
武士:平安時代の武士は帝や位の高い者の護衛。権力は低い。
公家(くげ):朝廷に仕える身分の高い者で武家に対して朝臣一般をいう公家衆。
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