~ 第二十七花 救世主 ~

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“ 虚しさや 数多の人の 血を浴びて 怨みの力 鬼と化す ”             妖艶な姿は赤き月に照らされ、更に妖しく悍ましい鬼の姿に見える。 友里はくすりと笑い、かちゃりと刀を下に下ろしまた、天に翳す。 天に翳された鋭い刃は、月光に照らされ血が深紅に輝く。 血は地面に滴り落ち、庭に敷かれた玉砂利を赤くする。 手に雫として落ちた血を、赤い舌を出し…艶かしい顔付きで、皆(みな)に見せびらかす様に舐める。 周囲の人達は、がたがたと震えながらその姿を見つめる。 何かにとり憑かれた様に…人々は友里に魅了されてしまう。   友里は刀を、己が傷を負わせた検非違使(けびいし)に向けた。 『サァ…お前ノ命と鮮血ヲ…頂コウカ…』 友里の声色が、修羅と交じり合い凶々(まがまが)しい声色に変わっていく。 検非違使は、地面に座ったまま傷を押さえ後退りをする。 『と…友里殿!』 ずるずると、後退りをしながら刀を構え防御に入る。 友里はくつくつ喉の奥で笑うと…   『無駄な足掻(あが)きを…無様な物だ…フフフッ…』   そう呟きながらゆっくり…検非違使に近付く。 検非違使は、恐怖で刀を持つ手が震える。   近付き刀を構え、振り下ろそうとした…その時っ!   しゅんと何かが飛んでて、友里の手に当たる。 友里は刀を落とし、飛んでた方向を見た。 そこには、素早く壁を飛び越えて現れた晴明だった。   『晴明!!来たか!』    忠行は晴明に声を掛け、また封じられた扉に術をかける。  『お師匠…遅くなり申し訳ありません。』   そう言うと晴明は、友里に見る。 『…小癪(こしゃく)ナ小僧…』   友里は、ちいっと舌打ちをし晴明を睨み付ける。 晴明は冷酷な目付きで友里を見る。 『お主…その魔の力を今すぐ捨て去れ…。身を滅ぼす。』 晴明は友里を見据えながら言う。晴明の冷静沈着な態度が気に障り、わなわなとする。 『貴様ニ何が解るカ!こわっぱがっ!!』 地に落とした刀を素早く拾い上げ、叫びながら晴明に襲い掛かる。           “ 人の想いとは…時に正になり…時に牙を向く魔になる…人間は難儀な者… ”
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