~ 第二十八花 友里の心情 ~

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“ 愛する君の声が…心に響く。愛しい…愛おしくて…切ない君の声が… ”     友里が放つ黒き殺気が薄れてゆくのが解る。己の片思いの君…雅の声が…心の奥に響いて、奥底に残っていた友里の理性…人間の心が雅によって…春風で凍り付いた友里の心を溶かし初めてゆく。 『友里様どうか…悪鬼に身も心も…取られないで…』 雅は泣き崩れ地面に身体を崩す。それを庇う様に将文は抱きしめる。友里は、雅に少しずつ…一歩一歩近付いていく。 周囲に居た近衛府(このえふ)と検非違使(けびいし)は、刀を構え友里をじっと見る。 忠行は、万が一の為結界(けっかい)を張り様子を伺う。 晴明は素早く雅達に近付く。 友里は…一歩一歩…足を引きずる様に近付く。   『雅…様…。』 泣き崩れた雅の元へ到着すると膝立ちをした。 将文は警戒をし、雅を抱きしめる腕(かいな)に力を込めた。 『友里様…。』 雅は哀しい顔をした友里に、手を伸ばし優しく握る。 友里は苦しみと後悔の念に苛まれ…涙を流す。 周囲の者や帝達は、友里の様子を伺いながら静かに見守る。 『私は…私は………。』 友里は何て話せばいいか、胸が詰まり上手く話せない。 その様子に感づいた雅は優しく笑みを浮かべ友里を見る。 友里は、落ち着き話し始める。 『幼少の頃から…父上に重圧を与えられていた…。何か出来ないと…見下され罰を与えられた…。“周りに衰えるな!そんな事も出来ない馬鹿が…!”と言われ続け愛を感じなかった。それが今でも苦しめ…あの将文殿との対決の時から…私の心が壊れ始めた。私は…父上を…将文殿を憎む様になった。それで…雅様と将文殿の婚儀を聞いて…怨みが強くなった…それは………雅様……貴女様を昔から…愛していた…。』 友里は今までの話をし…雅の事を愛していたと告げると…涙を流した。 それは…とても澄んだ涙…。 頬を伝い雅の手に落ち、雫が弾ける。 雅や将文…周囲の人間達は、友里の今までの苦しみを感じた。 雅は、友里の想いに…胸を痛めた。 『私の怨みや憎む心が…悪鬼を生み出した…。怨んでも…何も出来ぬのに…。数多の血を流した…。私に…尽くしてくれた…睦や花…。憎んでいた父上…公家様…数多の血を流した…。』 涙が…後悔の海を作り出していく…。友里の人間の理性が…嘆きの悲鳴を…上げる。       “ 怨みや憎む心は…何も道は開けぬ…。ただ生まれるのは… “悲しみ”“絶望”“後悔” ”
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