~ 第二十九花 正の炎 ~

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“ 哀しき男の叫びが響く…全てを捨てようとしている… ”             頭を抱え友里は痛みにもがき苦しむ。 雅は手を離さぬ様に居るが、友里は離そうとする。 友里の顔は、今宵の月の様に赤くぎょろりとしている。 だが、時折人間の友里の顔がふっと戻る様に見える。 『雅…様…将文殿と…早くお逃げ下…さい。貴女達を…巻き込みたくない…。私は…罪を…償わねば…。グァァ…』   痛みに堪えながら、雅に優しく笑みを浮かべながら言う。 『私が……起こした過ちを…自分の身で過ちを…償わねば…なりません……』 笑みが苦しみで歪み汗を掻きながら、友里が言う。 周囲の者達や帝は、友里の気持ちが痛い程伝わり胸を詰まらせる。 雅は、首を振り嫌がり両手で友里の手を握る。 将文は、苦悩な表情をしながら雅を離そうとする。 『雅様…。』 将文は、雅の気持ちも友里の気持ちも痛い位に解る。 憎まれ殺そうと考えられていた将文も、友里の今までの強いられて来た苦しみが解る。 自分もそう言う立場であったら…と考えると、理解出来る節(ふし)もある。   愛する人を…誰かに奪われたら 愛する人から…見下され続けたら…   拳を握り締め苦悩の表情をした。 でも…幾ら罪を重ねた友里であっても…救いたい気持ちはある。 将文は、雅の手に重ねる様に握る。 友里は驚き将文を見た。 『罪だとしても…見殺し等したくない…友里殿…。』 雅は将文を見て頷いた。 『グァァ……ッ!』 『友里から離れろ!呪い(まじない)をかける。』    その声で、将文は雅を友里から引き離す。雅は泣きながら離れ晴明を見つめる。晴明は雅に頷き泣く泣く友里から離れてゆく。 晴明は懐から符呪(ふじゅ)をまた出すと、呪いをかけ友里の背に飛ばす。 すると…。 先程飛ばした符呪と今飛ばした符呪が、赤き炎上げ燃え始めた。 燃え盛る炎は、友里を包み込む。 その炎は友里ではなく、友里の内に居る修羅に苦しみを与え始める。 『グワァァァァ…!!』 修羅は苦しみだした。         “ 赤き炎が悪鬼を苦しめる。人の心を弄ぶ…悪鬼を… ”
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