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都の中心から程近い場所にある屋敷があった。
そこの屋敷には、数多(あまた)の女人が憧れてやまない、雅楽師の屋敷。
その青年の名は、“天野 将文(あまのまさふみ)”と言う男が住んでいた。
帝も一目置くそれは、楽はおろか武術も秀でた男人だ。
雅楽師という役目にも就いているが、帝やその他の役職に就いている者の護衛や話し合いの席にも参加する優秀な人間だ。
将文は、文台に頬杖を付き雨降る外を眺めながら昨夜の事を考えていた。
“何て…綺麗な笛の音…それと声なのだろうか”
あそこの屋敷は、左大臣佐伯様のお屋敷…あの方が彼(か)の有名な、桜姫か…。
将文も桜姫の噂は、耳にしていた一人だ。
将文は、昨年開かれた宴の事を思い出していた。
~あの日も…貴女様は、華麗な舞と…繊細な笛の音を奏でていた…~
柔らかな夜風に吹かれた夜桜が…彼の人を彩り…綺麗に散っていった…
~ あの夜を ~
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