~ 周囲の願い ~

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“ 赤き焔(ほむら)が修羅を包む…人の心を弄ぶ悪鬼は…怒りを露(あらわ)にする… ”             赤き炎に巻かれた友里は、玉砂利の上をごろごろと転がり、苦しみ出した。   『グワァァァァ……ッ!』   友里と修羅は声色を重ねる様に、断末魔の叫びを上げる。 周囲の者達や帝は、驚き悲鳴を上げる。 雅は、両手で口を覆い涙を流し晴明の元へゆく。   『晴明様ッ!!友里様がッ!』   涙を流し身体を玉砂利に身体を崩し、晴明に訴える。 将文は雅に駆け寄り雅の悲痛に苦しむ身体を抱きしめる。 晴明は、雅の顔を見て…   『あやつの内(うち)から、悪鬼を出す。そうしなければ…友里死ぬ…己の罪に押し潰され、悪鬼に身も心も…全て喰われてしまう。』   そう言うと晴明は印を結び、呪い(まじない)を唱える。   この世に、怨み辛(つら)み・後悔の念を持つ者達は…肉体が朽ちて、灰になり土に還っても…怨念・嘆きは朽ち果てず…魂は数多(あまた)の星々にならず…この世に居座る。 哀しき者達は…生きている弱き人間達の心の隙に入り込み…呪(のろ)いを唱える…。   “ 人を怨めや…鬼になれ… ”   苦しみや怨むをこの世に遺した者達は…弱き人間の心を喰らい…仕舞いには、身も喰ろうとしまう。     哀しき者達の…連鎖     『頼む…この悪鬼と共に…私を殺してくれ……』   友里は苦しみながら、皆(みな)に叫ぶ。 皆はどうする事も出来ず、晴明や忠行の顔を見る。   『罪を悔いておるなら…生きよ!』   突然、帝が御簾(みす)ごしに叫ぶ。その声に、皆静まり返り帝を見る。   『罪を悔いるなら…己を捨ててはならぬ!』   その帝の言葉に、晴明と忠行は顔を見合わせ頷いた。 晴明は、印を結び呪(まじない)を唱える。   『臨・兵・闘・者・皆・陳・列・在・前ッ!ハァッ!』   九字の呪いを唱えると、ごぉーっと音を立て眩(まばゆ)い光りが友里に向かって放つ。             ※臨兵闘者皆陳列在前:九字呪文。自分の周りの邪気を払い身を護る為の呪文。 山伏や密教系の修行者がよく使用される。 右手を剣の形にして、臨兵闘者皆陳列在前と唱えながら碁盤の目のように切っていきます。これを九字を切ると言う。九字の切り方は他にもありますが、呪文は同じものを使います。
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