~ 第三十花 悍ましき修羅 ~

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“ 正の赤き焔(ほむら)に巻かれ修羅はもがき…骸(むくろ)の人形を使いし…実態化する… ”             晴明の放った九字の呪(まじない)いは、眩く光り友里目掛け飛ぶ。 友里の背に光りが当たり、友里と友里の内(うた)に潜む修羅は、声色を重ね不気味な悲鳴声を上げた。   『ギャァァァ…ッ!!!』   その時ッ! 友里の口から、黒き煙りが外に出ると…友里の赤く鬼の様な瞳は、普通に戻り友里はどさりと倒れた。 黒き煙りは、叫び声を上げ天に昇る。   『オノレ…オノレッ!!許さぬぞ…人間ドモッ!!皆殺シジャッ!』   そう悍ましき声を発し、ぐるぐると黒き煙りは渦を巻き、人の顔の様な形になった。 ぞっとする位の形相は、周囲を見回す。 己を捨てず人に戻った友里は、将文によって、担がれ遠くに離れた。   『友里殿ッ!友里殿ッ!お気を確かに!』   将文は友里を揺さぶり起こす。 雅も心配そうに、友里を見つめる。 すると…友里は、眉をしかめながらゆっくりと覚醒してゆく。   『ま…将文殿…雅…様…』   あの悍ましい鬼の様な形相は…今はなく…今までと同じ優しい友里の顔に戻った。 雅は、瞳に涙を溜め瞬きをすると…友里の頬にぽつりと粒が零れ落ちた。 それを見た友里は、涙を流した。   『許されぬ罪…だが、謝らせて欲しい…すまない…』 涙を堪(こら)える様に…下唇を噛み締め、眉をしかめた。 雅と将文は、安堵の溜息をついた。   黒き煙りは、高笑いを始めた。 皆(みな)天を見上げる。   『愚カナ人間ヨ…コノ地ヲ…血ノ海ニ…シテヤロウ…ハッハッハッハ…!』   そう叫ぶと、黒き煙り渦を巻き地に下りて来て…友里の身体を使って亡き者にされた公家の体内に入り込んだ。           “ 悍ましき黒き悪鬼は…力を蓄える様に…京の天に昇り…人間に手をかける… ”
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