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“ 怨みは人を壊し…血を流してゆく…。怨みでは、己を癒やせない…残るのは“無”だけ… ”
人の顔の様になった、黒き煙りは高笑いをしながら、横たわり事切れた公家の骸に向かって飛び、口から内(うち)に入り込んだ。
暫くすると…公家の骸は、ゆっくり…ゆっくりと起き上がる。
ゆらり…ゆらり…ゆらり…
身体を揺らしながら、身体を起こしてゆく。
公家の骸は、生きている人の肌の色とは違い、段々と肌は殻を破る様に…灰色の様な色に生まれ変わった。
血の気を無くし…腐敗した骸の様に…。
身体を起こした骸は…髪を乱し、こちらをじっと見据える。
皆(みな)、刀を構える。
将文は友里を連れ、修羅から離れる。
晴明と忠行は、符呪(ふじゅ)を構え様子を伺う。
骸はやがて…喉の奥で、くつくつ笑い始めると大声で高笑いし始める。
『ハッハッハッ…愚カナ愚民ドモ……血ノ雨ヲ降ラセテヤロウゾ…フッフッフッフッ…』
そう言うと、腕(かいな)を広げ力を溜める。
黒い気が修羅を覆うと…叫び声を上げた。
骸の顔は、みるみる内に変化してゆく…。
顔はぐしゃりと変化してゆき、目はぎょろりと剥き出しになり眉間には鬼の様に鋭い角が、ぐぐっと額の肉と皮を突き破り出てき、口をがばりと開け牙が生え耳は尖る。
身体も、変化してゆき…肘にも眉間の様に、肉を突き破り出てくる。元の公家の顔は…影も形も無くなる。
周囲の者達は、悲鳴を上げ目を覆う。女人達はそのえぐさに血の気を引いた。
雅は悲鳴を上げ、立てなくなり地にしゃがむ。
『フッハッハッハッ…見ルガイイ…愚民ドモ……』
修羅は、空中に浮遊した。品定めするかの様に、下に居る人間を見回すと、不気味な笑みを浮かべ、刀を構えていた武士は、突然浮遊した。
『うわぁ…ッ!!』
叫び声を上げもがく。周囲の者達は男を捕まえ様とするが、何かの力で阻まれた。
男は中に浮遊し、修羅に近付けられた。
『クックックッ……』
喉の奥で笑い、男を見つめる。
男は怯え刀を手から離した。
刀は地に突き刺さった。
不気味な笑みを浮かべ…鬼と化した大きな爪の長い手を振り上げ…武士の腹へ突き刺した。
『ギャァァァ…ッ!!』
腹を突き抜けた。
“ 犠牲の血の雨が降り注ぎ…修羅は恍惚(こうこつ)の笑みを浮かべた… ”
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