~ 第三十二花 呪縛 ~

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“ 刀の火花が散り…男は舞いを舞う様に華麗に交わしてゆく…正と悪の戦いは続く… ”             空を裂く様に、刀が振り下ろされる…。 が、晴明は、ごろりと地を転がり刀を交わす。   『チョコマカ…シオッテ…』   ぐぐっと歯を噛み締め悔しそうに呟く。   晴明は体制を取り直し、符呪を取り出しぶつぶつと呪(まじな)いを唱え、修羅の胸へ向け投げる。 符呪は飛んでゆき、修羅の胸に貼るつくと赤き炎に罷(まか)れる。   『グワァァァァ…!!!』   修羅は、叫び声を上げた。 炎は強く燃え上がり、修羅を取り巻く。 聖なる炎に焼かれ、修羅の身体は焼けどろどろと溶ける様に、肉が地に落ちる。   『ギャァァァァ…!!』   周りには肉の焼ける臭いが立ち込め、鼻につく。 晴明は空(くう)に、五芒星を描き呪いを施すと五芒星を飛ばした。 五芒星は、修羅へと飛び光ると 修羅を鎖で縛る様に動かなくした。   『…ガァァ…小僧…ッ!!』   呪縛された修羅は、炎に罷れ動けない身体を必死に動かそうとする。   その時、妖術によって閉ざされた扉は妖力が弱まり始めた。 忠行は、力を印に込め汗を掻きながら呪いを唱え“ハァッ!!”と声を張り上げると、扉が開き周囲の者達を忠行は誘導し逃がす。 周囲の者達は、悲鳴を上げ逃げてゆくが、帝は動こうとしない。   『帝…さぁ、御逃げ下さい!危険でございます!』   帝の側近や何人かが声を掛けるが、帝は目を閉じ微動だにしない。 すると…ゆっくりと帝は口を開いた。   『我は、京を納める者…逃げる等出来ぬ!』   真っ直ぐな瞳をし帝は言った。         “この京で戦う者達を置いて、我は逃げる事は出来ぬ…。見届けるのが…我に出来る事だ ”
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