~ 呪縛 ② ~

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“ 悪鬼は正の焔(ほむら)に罷れ呪(まじな)いの呪縛に囚われた…。”             帝は事を見届ける為、家来や側近の必死の制止を拒み、座を動かず見続ける。 怖くないと言えば、嘘になる… だが…この京で、自分の納める美しい京に起きた出来事…帝は握る手に力を込め、晴明と悪鬼の戦いを見届ける。   『どうか!御上(おかみ)!お逃げ下され!』   側近達は、必死で帝を説得するが…   『すごすごと逃げてはおられぬ!我が納める京で起きた事だ!見ぬ振りして、逃げられぬ!我は逃げぬ!逃げてはならぬのだ!』     帝は側近や家来に怒鳴りながら言うと、逃げる者…残る者が分かれた。 逃げる者は、そそくさと逃げてゆき…残った者達は、帝を守る為刀や弓矢を用意した。   雅と将文は、友里の怪我の手入れを雅の屋敷に仕える女房達としていた。   『…私の所為だ…私の心が弱いばかりに…あんな悪鬼を甦らせてしまった…。』   頭を抱える様に、友里は悔いた。雅と将文は顔を見合わせた後友里を見つめた。   『友里様…人間誰しの心にも…正と悪の考えを持ち合わせていると聞いた事があります…ご自分だけを御責めにならないで…』   怪我の手当をしながら、雅は友里に言う。   『そうです…友里殿。悔いても戻っては来ない…これからが大切です。』   将文は真っ直ぐ友里を見つめ言った。   友里は二人の想いが、心と身体を癒してゆく様な感覚を覚える。暫く…感じなかった…温かい優しさが…友里の胸が締め付けられた。     晴明の放った聖なる五芒星に囚われ身動きが取れなくなった修羅は、もがきながら呪縛を解こうとしていた。   『ガァァ…グワァァ!オノレ!小僧!許サヌゾ!』   修羅は、そう叫びながらふるふると動きの取れにくい呪縛に囚われた腕(かいな)を震わせる。   すると…がしゃんッ!   片方の腕を繋ぎ止めていた呪縛が音を立てながら割れた。         “ 悪鬼は…力を込める。動かぬ身体に新たな力を溜め始めた ”
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