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“ 数多の星になりたいと…悲しき涙を流し、訴える… ”
哀れな魂達は、修羅に喰らわれ修羅の力になる。
泣き叫びながら、魂は逃げ惑い助けを請う。
未練をこの世に残したが、悪に利用されたくないと…二人の陰陽師に嘆く。
『お助けを…お助けを…』
商人の男が、鳴咽を漏らし泣く。
『私を…助けて…』
位が少し高いであろう姫が、さめざめと泣き着物の袖を涙で濡らす。
雅の耳に、その哀れな魂達の嘆きが聞こえる。
胸が張り裂けそうな…切なく苦しい想い達が…雅の胸を締め付ける。
その時…母の形見の鈴が鳴る。
ちりん…ちりりん…しゃらん…
雅は鈴を手に取ると、鈴は風もない揺らしてもいないのに……
ちりん…ちりりん…しゃらん…
と鳴り続けた。雅は、周囲を見回すと哀れな魂達は、こちらを見ていた。
“そうだ…この鈴を…”
雅は、紐を摘み鈴をゆっくり揺らし鳴らす。
しゃらん…しゃらん…
そうすると、忠行と晴明の呪(まじな)いに溶け合う様に鳴る。
晴明は呪いを施しながら、雅を見つめる。
“ 呪いと鈴が…共鳴し合う ”
晴明は目を見開き驚く。
共鳴し合った呪いと鈴の音が、哀れな魂達を黄泉の世界へ導く。
雅の父は、雅を見つめる。
“ 鈴と呪いが…導く… ”
父は目を閉じ涙を流した。
それは…己の妻…雅の母の願いの様な鈴の音…。
父は雅に近付く。
雅は父を見つめ涙した。
『母様が…助けてくれる。晴明様や忠行様達の呪いと共に…』
そう言うと涙を零した。
父は雅から鈴を取ると、自らも鈴を鳴らした。
ちりりん…しゃらん…ちりりん
泣き叫びながら逃げ惑う魂達は、安らかな笑みを浮かべ…星になってゆく。
それを見た忠行は…
『晴明よ…我は左大臣殿と魂達を誘う。其方はあの若人達と共に、再び悪鬼を伐つのだ!』
忠行は晴明に指示を出すと晴明は、印を解く。
『…御意…』
将文と友里の元へ走る。
雅は父に鈴を託すと、懐にしまっていた笛を取り出し…吹き始める。
優しき…笛の音が…魂達を包み込む。
魂達は嬉しそうに笑みを浮かべ…
『有難う…』
と…雅に告げ…数多(あまた)の星になって逝く…
“ 鈴と呪いと笛が…哀れな魂を救う… ”
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