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“ 笛の音が…未練や苦しみの鎖を引きちぎり…黄泉へと誘(いざな)う。またいつか…人として転生する事を夢見ながら… ”
雅と忠行と雅の父は、哀れな魂が修羅に、喰らわれてしまわない様に懸命に祈りの音と呪(まじな)いを施し、黄泉へと導く。
哀れな魂は、綺麗な涙を流し安らかな笑顔を遺し、天駆ける星になって逝く。
きらきらと音がする様に…神々しく光を放ち空へ旅立ってゆく。
『…貴方達に安らかな眠りを…』
と笛を止め一人一人に、雅は優しく微笑みながら声を掛けてゆく。
今で言う“聖母”“女神”の如く…彼の者達の苦しみや怒りを鎮め、温かく包み込む様に…。
忠行は呪(まじな)い施しながら、雅に目を向ける。
“何て言う…神々しい娘なのだろうか…。母君譲りか…。”
と心の中で呟いた。
雅の母は、陰陽師にゆかりの者で“巫女”として雅楽や祈祷の時、舞いを踊る役目にあった。
だから、陰陽師の忠行と晴明が今宵の婚儀に呼ばれた訳だ。
母親が亡くなり、ひそかに雅が力を受け継いだのか…と忠行は思った。
この神々しく優しい気を纏った雅を忠行は見つめた。
哀れな魂達を黄泉へ導く一方、晴明・将文・友里は…修羅と相見える。
がしゃん…がしゃん!と、刃と刃がぶつかり合う。
『オノレッ!!虫ケラドモッ!』
修羅は怒りの叫びを上げ、襲い掛かる。先程、友里に斬り付けられた腹からは、夥(おびただ)しい血が流れる。
『虫けらに…虫けらとは言われたくはないが…!』
小刀で応戦する晴明が、冷酷に笑みしながら言う。
『お前等に、京を汚(けが)させはしない!』
将文は、額に汗しながらぎりぎりと襲う刃を交わしながら言う。
『許サヌゾ!許サヌゾ!』
刀をぶんと振り修羅は怒りを露(あらわ)にしながら叫ぶ。
晴明と将文は、交わしたが友里は腕を掠る。
『ッ!!』
友里は腕をを押さえその場を少し離れた。
『友里殿!』
将文は友里に駆け寄る。
『大事ない!将文殿』
友里は刀を構え将文に言う。
雅も額に汗を光らせ、笛に祈りを込める。
忠行は手を休めず雅に話掛ける。
『流石…皐月殿の娘だ。聖なる力を受け継いだ。』
忠行の言葉に、雅は忠行を見た。
“ 母様の力…。やはり…鈴の力は母様の…。温かい力が私にも… ”
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