~ 第三十六花 哀れな神 ~

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“ 深い…深い…怨みの執念は、人を苦しめ哀しみを産み続ける… ”             修羅は鼻息を荒くし、痛みで呻きながら晴明をぎょろりとした目で見る。 腹からはとめどなく、血が溢れ出し地面を血濡らしてゆく。 獣の様な呻きを上げ、体制を必死に立て直そうとする。   “ 負ケラレヌ…完璧ナ肉体…ヲ…手ニ入レ…コノ世ヲ…我ノ手ニ……ググゥ… ”   この世に残りたい…この世を手に入れたいという執念が、修羅を取り巻く。 何故(なにゆえ)に…この世に執着するのだろうか…。 死して尚…この人間世界に、“怨霊”として魂を残し…人を脅(おびや)かし、肉体を乗っ取り…じわりじわりと殺してゆく。 己の肉体は、灰になり土に還って戻る事が出来ず…人の肉体を奪う。 哀れな執念は…己をも苦しめ真綿で首を絞める様に…じわりと絞め付ける。 晴明は、心の中で思う。   闘い好きな神…血を欲(ほっ)し続ける神の名…“修羅” 彼の者は、死して尚も“生(せい)”に執念し過ぎ…己を苦しめ続ける哀れな神…。   修羅自身焦りを見せ始める。 元々肉体は、朽ち果てた公家の骸が鬼になった物… 斬り付けられた傷からは、血が堪えず流れる。 肩で呼吸をし始め汗が吹き出す。   『グゥ…』   呻きながら刀を構え、三人を見据える。 “負ケラレヌ…負ケラレヌノダ………!” 修羅は襲い掛かって来た。 上手く将文は交わし続ける。 “愛する者の為に…。姫を守らねば!” 将文は刀を必死で交わしながら思う。         “神の名を持つ修羅は…血を欲し…肉体を欲し執念で闘い続ける…哀れな神… ”
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