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“ 深い…深い…怨みの執念は、人を苦しめ哀しみを産み続ける… ”
修羅は鼻息を荒くし、痛みで呻きながら晴明をぎょろりとした目で見る。
腹からはとめどなく、血が溢れ出し地面を血濡らしてゆく。
獣の様な呻きを上げ、体制を必死に立て直そうとする。
“ 負ケラレヌ…完璧ナ肉体…ヲ…手ニ入レ…コノ世ヲ…我ノ手ニ……ググゥ… ”
この世に残りたい…この世を手に入れたいという執念が、修羅を取り巻く。
何故(なにゆえ)に…この世に執着するのだろうか…。
死して尚…この人間世界に、“怨霊”として魂を残し…人を脅(おびや)かし、肉体を乗っ取り…じわりじわりと殺してゆく。
己の肉体は、灰になり土に還って戻る事が出来ず…人の肉体を奪う。
哀れな執念は…己をも苦しめ真綿で首を絞める様に…じわりと絞め付ける。
晴明は、心の中で思う。
闘い好きな神…血を欲(ほっ)し続ける神の名…“修羅”
彼の者は、死して尚も“生(せい)”に執念し過ぎ…己を苦しめ続ける哀れな神…。
修羅自身焦りを見せ始める。
元々肉体は、朽ち果てた公家の骸が鬼になった物…
斬り付けられた傷からは、血が堪えず流れる。
肩で呼吸をし始め汗が吹き出す。
『グゥ…』
呻きながら刀を構え、三人を見据える。
“負ケラレヌ…負ケラレヌノダ………!”
修羅は襲い掛かって来た。 上手く将文は交わし続ける。
“愛する者の為に…。姫を守らねば!”
将文は刀を必死で交わしながら思う。
“神の名を持つ修羅は…血を欲し…肉体を欲し執念で闘い続ける…哀れな神… ”
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