~ 第三十七花 雅の叫び ~

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“ この京…愛する大切な人達を神様…どうか…お守り下さい… ”             修羅はゆっくり…ゆっくりと傷付いた身体を引きずりながら、雅に近付いてゆく。   この京を…愛する大切な人達・…肉体は灰になり地へ還ったがこの世魂だけを留(とど)めた哀れな魂達を黄泉へ導く為…清らかな想いを笛に託す雅を、じっと見据え…じわりじわりと近付く。   “頭ガ…割レソウジャ…アノ笛ノ所為ダ…許サヌ…勝手ハ許サヌゾ……”   修羅は心の中で呟くと、苦虫を噛み締める様な顔をしながら近付いてゆく。雅は、自分を見る修羅に気付き、硬直した。忠行はそれを察知し、雅の前に立つ。 次々と修羅を仕留める為、立ち向かう。   『悪鬼めッ!覚悟しろ!』   検非違使は刀を振り上げるが、修羅は強い力で虫けらの如く大きな鬼の手で、叩(はた)き飛ばした。   『グワァッ!!』   検非違使は、飛ばされ塀に叩き付けられずるずると身体を滑らせ、身体を倒す。 晴明は、修羅の目先に何があるかを目で追う。        “ 雅 ”   『標的は左大臣姫だッ!!』   晴明は叫ぶ。皆(みな)目線を修羅に合わせると、その先には雅が居た。 近くに居た武士や近衛府・検非違使は、雅を囲む様にして防御に入る。 晴明・将文・友里は、雅の方に向かう。   私の不覚…修羅は、聖なる力を嫌うのを私の呪(まじな)いで、解っていたはず…なのに…どうして早くに気付かなかったのか!   晴明は心の中で、自分を咎める。 晴明は必死に走る。   修羅は立ちはだかる者達を潰しにかかる。   『邪魔ジャ!!虫ケラドモ!』  傷付いた身体で、修羅は力を振り絞り刀を振り下ろす。 嫌な音を立てながら、肉体を斬り裂いてゆく。   断末魔の悲鳴が響き渡る。 雅は、恐怖の光景に震え上がり涙を流しながら声を張り上げた。   『貴方は何がしたいのです!!』     雅の声が周囲に響いた。       “ 怖い…怖いけど…これ以上人の傷付く…死んでゆく姿を見たくない… ”
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