~ 第三十九花 哀しみ ~

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“ 頭ガ…キリキリ痛ム…。アノ笑ミ…アレハ…菖蒲……。我ノ愛シタ…菖蒲…… 頭ガ…記憶蘇ラセ様ト…… ”               修羅の脳内に、ある名が浮かび上がる。       “ 菖蒲 ”   悪に染められた脳内と黒く淀み切った心に…“ 菖蒲 ”と言う名がはっきりと浮かぶ。 過去に…愛を誓い契りを結んだ仲…。 彼の人は、とても繊細で六弦を弾き熟し…優しい笑みと優しい言の葉を…いつも我に向けてくれた…彼の人…。 永久(とわ)を誓い寄り添う双方の姿が…霧にかかりながらも…修羅の脳内に浮かぶ。   『グアァァァァッ!!』   波の様に、修羅の脳と心に記憶が押し寄せ、修羅を苦しめていく。 叫びながら修羅は頭を抱え始めた。   『貴方は…過去に怨みを抱えている…哀しき…哀しき怨みを…。』   雅は近付きながら修羅に言う。 頭を抱えグゥ…と唸り、頭の痛さで唾液を垂らしながら雅を見る。   『哀しき過去に囚われてしまった貴方は…悪鬼に身も心も奪われ…黒く塗り潰されてしまった…。』   雅は話を続ける。悲しそうな顔をしながら…哀れむ。 同情ではなく…心の底から… 修羅の痛み哀しみを…身体と心全体で味わっている。   『お話下さい…。わたくしに…何が出来るか解りませんが…貴方の哀しみを少しでも知りたい…。』   修羅に近付いた雅は、真っ直ぐ見つめ力強く言う。         “ 過去の哀しみは…誰もが持つ痛み…。簡単には消す事等…無理な話…。でも…知りたい…貴方を縛り付けられ悪鬼に染められる前の貴方を… ”
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