~ 第四十花 心の涙 ~

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“ 漆黒の霧の中から…白魚の手が伸びる。 救いの手か…それとも…人間の皮を被った…悪鬼か … ”             過去の鎖が、修羅を縛り続ける。苦しみの唸りを上げ頭を抱える。激痛が走り、時折髪を掻きむしり掴む。 優しき雅の声が…身体中を支配してゆく。   脳髄(のうずい)に、あの物腰の柔らかで小鳥が歌う様な声が、修羅を支配する。 修羅を呪縛の鎖を白魚の手で、ゆるり…と懸命に外してゆく。   『貴方の誠の名は、蒼助(そうすけ)と言う…。貴方は修羅ではございません。』   雅は真っ直ぐ修羅を見据え、優しく笑みを浮かべる。   『ワ…我ノ名は…修羅ダッ!』   頭を抱えながら、雅を睨み言い放つ。 雅は首を左右に振り…   『貴方は…蒼助様です。戦の血を好む悪神 阿修羅神ではございませぬ!貴方様は、過去の苦しみ…憎…怨念の心に、魔が支配しただけ…。貴方様の苦しんでいる事…怨みは何なのですか?貴方様の苦しみ…少しでも解いて差し上げたい…。貴方様の誠のお顔が…見とうございます。』   雅は、切なげに修羅に問い掛ける。   『…何故(なにゆえ)…何故…其方…ハ我ニ問イ掛けルのだ…?…この残酷ナまでに、人を殺めた我に…。』   低く痛みの唸り声を上げながら、雅に聞く。 雅は…優しく微笑み…     “ 誠の貴方様の心が…泣いているから…。貴方様の苦しみが…伝わります。誠の貴方様は…とても…御優しい方です。わたくしには…感じるから…。残酷な過去の出来事の所為… ”   “ わたくしは…貴方様を…御救い致したいのです… ”      “ 蒼助様 … ”     “ 誠の心が…泣いている。助けを求め…楽になりたくて…。誰かに気付いて欲しくて…怨みを晴らしたくて…誠の心が…泣き叫ぶ… ”
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