~ 忌まわしい過去 血の戦慄④ ~

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“ 横たわる骸は…断末魔の叫びを上げその表情で…生き絶えていた…。恐怖が心と身体を浸食してゆく… ”               二つの骸(むくろ)は、重なり合う様に倒れていた。 至る所に、無惨にも鋭利な刃物で切り裂かれている。 一箇所ではなく…数え切れぬ程…怨みのこもっているかの様に…。 蒼助の脳や身体…心は、恐怖がじわり…じわり浸食始めた蝕まれていく様だ。 震える身体で、台所を出ると愛する姫を捜す。    嫌な予感が…心を締め付ける   渡殿(わたどの)を無我夢中で、走る。滑り足が縺(もつ)れ、転びそうになりながら…各部屋を回る。 部屋には…無惨な骸が倒れていた。 首を斬られた者…一瞬で意識を失わず、強烈な痛みと苦しみの果てに息絶え断末魔の最期を迎えた者…。 生臭い鮮血の臭いが、屋敷を支配する。 吐き気が止まらず、ふらりふらりと柱に寄り掛かる。   『菖蒲姫……。』   恐怖と逢いたさが、涙を流し虚しく頬を伝う。   何故(なにゆえ)…この様な事に…。   そればかりが、脳裏を過(よ)ぎる。 足が動かない…恐怖で。 身体の震えが止まらない…恐怖で。   はぁ…と息を吐き、ゆらりと身体を起こす。 また、蒼助はふらふらとしながら各部屋を周り始める。     その時……!   何処からか“う゛…”と唸り声が聞こえてくる。 びくりと身体が震え、辺りを見渡す。 耳を済ませるとまた…唸り声が聞こえた。      
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