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“ 横たわる骸は…断末魔の叫びを上げその表情で…生き絶えていた…。恐怖が心と身体を浸食してゆく… ”
二つの骸(むくろ)は、重なり合う様に倒れていた。
至る所に、無惨にも鋭利な刃物で切り裂かれている。
一箇所ではなく…数え切れぬ程…怨みのこもっているかの様に…。
蒼助の脳や身体…心は、恐怖がじわり…じわり浸食始めた蝕まれていく様だ。
震える身体で、台所を出ると愛する姫を捜す。
嫌な予感が…心を締め付ける
渡殿(わたどの)を無我夢中で、走る。滑り足が縺(もつ)れ、転びそうになりながら…各部屋を回る。
部屋には…無惨な骸が倒れていた。
首を斬られた者…一瞬で意識を失わず、強烈な痛みと苦しみの果てに息絶え断末魔の最期を迎えた者…。
生臭い鮮血の臭いが、屋敷を支配する。
吐き気が止まらず、ふらりふらりと柱に寄り掛かる。
『菖蒲姫……。』
恐怖と逢いたさが、涙を流し虚しく頬を伝う。
何故(なにゆえ)…この様な事に…。
そればかりが、脳裏を過(よ)ぎる。
足が動かない…恐怖で。
身体の震えが止まらない…恐怖で。
はぁ…と息を吐き、ゆらりと身体を起こす。
また、蒼助はふらふらとしながら各部屋を周り始める。
その時……!
何処からか“う゛…”と唸り声が聞こえてくる。
びくりと身体が震え、辺りを見渡す。
耳を済ませるとまた…唸り声が聞こえた。
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